拝啓 向暑の候
雨に濡れ、木々の緑も深みを増す今日この頃、皆様ご機嫌は如何でしょうか。
タロットカード「アート・オブ・ライフ」の今日のカードは、
No.4「皇帝」
「ヘンリー8世」ハンス・ハルバイン作(🇩🇪ドイツ)
冷酷無慈悲な絶対王政のイングランド王ヘンリー8世。そしてエリザベス1世の父親です。
箴言は、🇬🇷古代ギリシャのストア派哲学者エピクトテスの言葉
“First say to yourself what you would be , and then do what you have to be.”
「まずは、どうなるかを自分に言い聞かせなさい。そして、貴方がしなければならないことをしなさい」(先ず、自分に問え、次に自分で行え)
”自分自身を統治できぬ者は、自由にあらず”
そもそも、エピクテトスという人は、あまり馴染みがありません。
ストア派とはなんでしょう?
エピクテトスは、紀元50年頃、現在のトルコ付近で奴隷の両親の間に生まれ、その後ローマへ奴隷として売られていきます。
生まれながらに奴隷で、慢性的な肢体不自由な障害者でもありました。
奴隷から解放されてからも、国外追放等の辛酸を経て、哲学の私塾を開き不安定ながらも生計を立て、当時、流行思想であったストア派哲学を自分自身の『生き方』として学びとり洗練させていった奴隷哲学者という苦労人です。
ストア派とは、アテネの広場にあった公共の会堂の廊下にある柱で哲学の議論をしたことから「柱廊の人々」(ストア派)と呼ばれたのが始まりだそうです。
「ストイック」という言葉は、ここから生まれています。
彼は、「真の自由」を得る為には、
・自分がコントロール出来るもの
・自分がコントロール出来ないもの
の境界を定め、認識・欲求・人間関係の見方を正すことを説きました。
「奴隷が奴隷でありながら、如何に真の自由を手にするか?」について
「私は、自分にどうにか出来る事には力を注ぐが、どうにも出来ない事は放っておきます」と答えたそうです。
「『自由』と『幸福』は、私達がコントロール出来る範囲を超えたものに対して、無視する事によって得る事が出来る」
また、エピクテトスは、ズバリ「記憶しておくがいい、君は演劇の俳優である。劇作家が望んでいる通りに、短編であれば短く、長編であれば長い劇を演じる俳優だ。」
「作家が君に物乞いの役を演じてもらいたければ、そんな端役でさえも君はごく自然に演じるように。足が悪い人でも、王様でも、庶民でも同じ事。君の仕事は、与えられた役を立派に演じる事だ。その役を誰に割り振るかは、また別の人の仕事である」
「今、何を望まれているいるのか?」を見極めることが大切なのだと。
エピクテトス自身、自分の肢体不自由な事すら、演じ切るべき役柄なのだと理解していました。
それは、消極的な態度とも、驚くべき前向きな態度ともとれます。
「我々は、なりたいものになれる訳ではない」
生まれた場所、遺伝も含めた親からの影響、育った環境や文化など様々な条件が合わさって今の自分がある。
舞台背景を無視して身勝手な演技をすれば、演劇は成り立たない。
自分の境遇を無視して生きようとすれば、必ず無理や歪みが生じてしまうだろう。
ごく平凡な市井の庶民が、如何にして真の自由を享受し、幸福な生活にあずかることができるのか?は、そのまま現代人にも通ずるものがあります。
絵画の「ヘンリー8世」は冷酷無慈悲な絶対王政の🏴イングランド王です。
彼の生き様も役柄なのだろうか?
王様の肖像に奴隷の箴言が載せられているのが興味深い。
王様も奴隷も、今自分がコントロール出来るもの、出来ないものをよく理解した上で、コントロール出来るものの中から目標を見つけて行動するのが、『真の自由』というものなのでしょうか?
「生きづらい」今の世の中をどう生きるか?を教えてくれているように思えますね。
季節の変わり目に、どうか皆様体調を崩されませぬよう願っております。
敬具 天野雄太