拝啓 仲秋の候
秋の夜長、なんとなく人恋しい季節につられ、前回紹介いたしました、著名人たちの “ラブレター” part2 をお送りいたします。
11 芥川龍之介(🇯🇵 作家)
婚約中の塚本 文さんへのラブレター
「文ちゃん。先達は田端の方へお手紙ありがとう。(中略)会って話をすることもないけど、唯まあ会って、一緒にいたいのです。
(中略)文ちゃんの事を苦しいほど強く思ひ出します。そんな時は、苦しくっても幸福です」
「文ちゃんは、もう寝ているでしょう。(中略)もし、そこに僕がいたら、いい夢を見るおまじないに、そうっと瞼の上を撫でてあげます」
素直でロマンチックな感じですね。
12 川端康成(🇯🇵 作家)
婚約者へのラブレター
「君から返事がないので、毎日毎日、心配で心配で、ぢっとして居られない。手紙が君の手に渡らなかったのか、お寺に知られて叱られているのか、返事するのに困る事があるのか、もしかしたら病気ぢゃないか、本当に病気ぢゃないかと思ふと、夜も眠れない」
寝ても覚めてもという感じがでていますね。
恋は、大作家も眠れなくさせてしまう。
13 北原白秋(🇯🇵 詩人)
人妻 松下俊子さん(魔性の女と言われていた)へのラブレター
「もっと亢奮(興奮)さして、その上で昔より熱烈な新しい抱擁に堕ちようではないか、もっと手紙をおよこしなさい・・・何にしても離れてみなければ女の美しさも男の偉さもわかるものではない。
ただむやみに恋しい恋しい・・・僕はお前に惚れているんだもの、バカだね」
「今度逢わば、お前様を殺すか、一生忘れられないほどの快楽の痛出をお前様に与えるか、二つに一つに御座候」
結果、不倫の果てに姦通罪で逮捕されてしまう。
魔性の女は怖い。でも、魅かれてしまうのが世の男性なのかも。
14 太宰 治(🇯🇵 作家)
愛人 太田静子さんへのラブレター
「いつも思ってゐます。ナンテ、へんだけど、いつも思ってゐました。正直にいはうと思います。(中略)おかあさんが亡くなったそうで、お苦しいことと存じます。いま日本で、仕合わせな人は、誰もありませんが、でも、もう少し、何かなつかしいことが無いものかしら」
「いちばんいいひととして、ひっそり命がけで生きてゐてください・・・コヒシイ」
最後に、カタカナで一言「・・・コヒシイ」女心をくすぐりますよね。しかし、奥さんがいるんでしたよね。
15 谷崎潤一郎(🇯🇵 作家)
人妻 松子さんへのラブレター
「もし、幸に私の藝術が後世まで残るならば、それはあなた様というものを伝えるためと思し召してくださいまし」
「御寮人様の中僕として、もちろん私の生命、身体、家族、兄弟の収入などすべて御寮人様の御所有となし、お側にお使いさせていただきたく、お願い申し上げます」
へりくだった感じが、ちょっとMっぽさを感じさせますね。
16 石原裕次郎(🇯🇵 俳優)
女優(後の妻) 北原三枝(石原まき子)さんへのラブレター
「逢いたくて、逢いたくてしょうがない。絞め殺すほど抱きしめたいけど、僕の足がマコの部屋に向かないの」
「どうして僕らは、暗い人影のない夜の道を歩くことだけを唯一の幸せと思わないといけないのか?」
「マコのことだけで一杯で、他の考えも浮かばないよ」
「離れていても一緒」
昭和の大スター同士の自由にならない“ 忍ぶ恋 ”
17 柳原白蓮(🇯🇵 歌人・旧華族 柳原伯爵の次女 大正天皇の従妹)
当時人妻であった彼女から、年下の大学生 宮崎隆介さんへのラブレター
「どうぞ私を、私の魂をしっかり抱いてくださいよ。あなたは、決して他の女の唇には手も触れてはくださるなよ。女の肉を思ってはくださるなよ。
(中略)・・・覚悟していらっしゃいまし。こんな恐ろしい女、もういや、いやですか? いやならいやと早く仰い。さあ、どうです。お返事は?」
人妻(歌人)が年下の大学生(東大法学部)に送った“ 恋”の脅迫文? 駆け落ちという結果が待っている。
18 ベートーベン(🇩🇪 音楽家)
B.T.(不明)へのラブレター
「燃える心を鎮めて、二人の行方を考えよう。一緒に暮らすために。愛して欲しい。君への忠実な愛を信じておくれ。あなたは永遠。僕も永遠。いつまでも二人で」
B.T.って誰? 相手が謎です。
その他として、ラブレターではありませんが、著名人が記した切ない思いの言葉・・・
寺山修司(🇯🇵 詩人・作家)
「思い出さないで欲しいのです。思い出されるためには、忘れられなければならないのが嫌なのです」(『思い出さないで』)
切ない!
竹久夢二(🇯🇵 画家)
「話したいことよりも何よりも、ただ逢うために逢いたい」(『恋の言葉』)
理由なんていらない!
江國香織(🇯🇵 作家)
「さようなら、もうお目にかかりません。でも、少しだけ誰かのものになれて嬉しかった」(『振り向く』)
こんな置き手紙があったら、一生探してしまいそう。
太宰治(🇯🇵 作家)
「もう一度お逢いして、その時、いやならハッキリ言ってください。私のこの胸の炎は、あなたが点火したのですから、あなたが消してください。
私ひとりの力では、とても消すことが出来ないのです」(『斜陽』)
えっ、私のせい・・・。
女心をくすぐって「いや」とは言わせない感じですよね。
でもちょっと卑怯な感じも・・・
どうでしたでしょうか?
男性より女性の方が、覚悟がはっきりしていて強さを感じたのは私だけでしょうか?・・・。
『恋』は人を、愚か者にも、詩人にもしてくれます。
トキメキ、喜び、涙、悲しみ・・・色々な感情を積み重ねて受け入れていくたびに人は成長して、男性も女性も素敵になっていけるのではないでしょうか?
・・・・・。
それでは皆様、時節がら、ご自愛専一にてお願い申し上げます。
敬具